ミケネ美術 3

このことは「ティリンスの官女」についてもふれましたが、他の壁画についても共通しています。


形式化と類型化はミケネ壁画に流れる傾向です。


したがっ、てその人物も動物もクレタのような新鮮な生命の訴えはないし、また軽快な動きはなくぎこちないものです。


自然主義が後退したときは形式化するのは当然ですが、また表象化の傾向があらわれます。


抽象化するのです。


それは当時の宮殿式陶器にあって植物が示すのと同じです。


色彩もまた自然から遠ざかっています。


クレタの明るく繊細な色彩は濁りまた単純になります。


ティリンスの猪狩図の猪も犬もその表現はともかく犬の斑点は紅と青という不自然さですし、女性の服装の色はニュアンスを忘れ、中間色の美しさを知りません。


このように表現にも彩色にも自然を忠実に写すことをおろそかにするとき、線も変質します。


対象の生命に共鳴するクレタ画家は、その輪郭線や細部をあらわす線に強弱をつけていました。


ミケネ画家の線はどこでも一定の太さの線であり、硬化しています。


このようにミケネ人の表現力は退化しています。


・・・しかし崩れてしまうことはなかったのです。

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